家の査定を依頼するときの注意点

家じまいの第一歩として、家の査定をしてもらうことを考える人は多いでしょう。家の査定には、一括査定サイトなどを利用して行う簡易査定、現地に実際に赴いて行う訪問査定などがありますが、どちらにしても家の査定時には注意してもらい点があります。
家の査定時の注意点①:始めに物件調査を行う
一括サイトなどでの不動産査定では、物件の種別や築年数、住所を入力するだけで査定額が出てきます。
しかしそれだけでは、その家の本当の価値や状況を推し量ることはできません。
実際にその物件の状態を判断して査定しているわけではなく、単にこれまでの実績から金額をはじき出しているだけだからです。
さらに一括査定で入力する情報は限られており、査定を依頼する本人もその物件に対する正しい情報を全て知っているわけでもありません。そのためもあって、正しい査定結果を得るのは難しい。
車の査定でも、年式と走行距離だけでは大まかな査定額しか出ないのと同じです。もちろん実際に現地に赴いた訪問調査なら、より正確な査定結果が得られます。
しかし「査定金額」=「実際に売れる金額」というわけでもありません。家の値段は立地や需要など、様々な要因によって決まってくるからです。商売なら何でもそうですが、売りたい商品の状態や情報を正確に知らずに、適正な値付けを行うことはできません。家も、全く同じです。
家じまいのためにはその物件の正確な価値を知らなければなりませんが、価値を査定するには、 その物件の正確な状態を把握していなければならないのです。これを、物件調査といいます。
物件調査には家の広さや構造だけではなく、法令上の制限や建築上の問題、立地環境、さらに物件の権利関係などを把握することが含まれます。物件調査には登記簿謄本を確認するほか、様々な方法で必要な情報を入手します。
家の査定に必要な物件調査
- 現地調査:建物の配置や境界、周辺の環境などを確認する
- 法務局調査:所有者や抵当権の有無、大きさや構造を確認する
- 役所調査:物件に関わる規制(建ぺい率など)や道路状況、上下水道などを確認する
- ライフライン調査:上下水道(浄化槽)の使用状況、ガスの種類、電飾会社などを確認する
- その他、必要な調査
こうした調査によって、その家に住んでいる人でも知らなかった情報が明らかになることも珍しいことではありません。相続などで引き継いだ物件だと尚更です。特に今は地方を中心に空き家もどんどん増えてきているため、家を売ることが本当に難しくなってきています。
そうした中で希望通りの家じまいを実現させるためには、やはり査定をお願いする前に物件調査を行って、その家の正しい情報を知ることが本当に大切なのです。
また、いざ査定をしてもらっても、業者によって言い分が全く異なる、ということも決して珍しいことではありません。例えば、こんなことがありました。
築40年の戸建てを相続された方が不動産会社数社に査定を依頼すると、Aの業者は「家はきれいな状態なので早めに売ったほうが良い」、Bの業者は「雨染みがあるから雨漏りの可能性がある。このままでは売れないので解体したほうが良い」と、全く正反対の見解でした。
私の見立てでも評価額は400万~600万円くらい。ただこの金額でも売るのは難しそうです。
というのも、確かに家自体はきれいなのですが、断熱性や耐震性を考えるとリノベーションするという需要があるかどうかも分からない。とにかく安いというだけで買ってくれる人もいないとはかぎりませんが、その場合は本当に雨漏りがあった場合、補償や損害倍書の責任を取らなくてはなりません。とはいえ、雨漏りを調査して修繕したところで売れる保証もないわけですから、なかなか決断が難しい。
では更地にして土地だけ売るのはどうか?
それも簡単にはいきそうにありません。というのも、その家は坂の途中に建っていて道路との高低差もあり、境界ブロックも石積みのため、もし更地にして新しく家を建てようと思ったら、外構にもお金がかかりそうな土地だからです。
売れるかどうか分からない土地にするために、解体費用を出すのは相談者としても厳しい。とはいえ、家として売るのも難しい。業者の意見が分かれるのも無理はありません。
このように査定結果自体も業者によって異なるわけですから、事前の物件調査がいかに大切か良く分かっていただけるのではないでしょうか。
希望通りの家じまいを実現させるためには、査定を依頼する際には事前に必ず物件調査を行ってください。物件調査をもとに正しい査定を受け、その上でどんな家じまいが適当かを考えるのです。
家の査定時の注意点②:調査が難しい場合はプロに相談する
とはいえ、不動産に詳しくない人が法務局や役所に赴いて物件調査をするのは、現実的ではありません。物件調査が自分には難しいと思ったら、迷わず私たちのような不動産のプロに相談してください。
もちろん自分で調査することも可能ですが、そのために何日も本やネットを使って勉強して、それでも見落としなどを心配するくらいなら、最初から信頼できるプロに相談するほうが時間や労力の節約になるのではないでしょうか。
不動産のプロである私たちならば、家じまいのために必要な物件情報をもれなく入手できます。そしてここが大切なのですが、ただ単に調査するだけではなく、その結果をもとに望み通りの家じまいを実現させるためのアドバイスも与えられます。
例えば上の事例では、相談者に「古家付きの土地」として売ることを提案しました。基本的には土地として売るのですが、現状では戸建て物件が付随しているという物件です。この土地を買いたいという人が現れたら、解体して更地にして売り出せます、という条件にしたのです。
こうすれば、解体するのは買い手が決まってからで良いので、資金繰りも問題ありません。もし建物をそのまま使いたいという人がいれば、住宅分の瑕疵責任(雨漏りやシロアリなど)は負わないという条件をつけることも可能です。あくまで売るのは土地であって、建物をどうするかは買う人が決めることだからです。
このように不動産のプロに物件調査をお願いすれば、それをもとにどんな家じまいがベストなのか、というアドバイスももらえます。
地元の不動産屋さんと付き合いがあって、その不動産屋さんに査定をお願いすることもあるでしょう。もちろんそれ自体は問題ないのですが、その人が「雨漏りがあるので、売るのは難しい。解体して更地にしましょう」と言われたら、どうするか。事前に物件調査をせずに家の本当の状態が分かっていないと、その提案を受け入れるしかないかもしれません。
しかしプロに事前調査をお願いすれば、家の正しい状態が分かります。それだけではなく、たとえ雨漏りがあったとしても、どんな家じまいができるかを一緒に考えてもらえるのです。不動産の一括査定を行ったことがある人ならすぐに理解できるでしょうが、家の査定額は会社によって数百万円の差が出ることは珍しいことではありません。
それはつまり、各社によって査定時に重視している部分が異なるということです。そうした状況の中で正しい査定結果を得るにも、それをもとに家じまいの方法を考えるのにも、やはりプロに頼ったほうが安心ではないでしょうか。家の正確な査定結果を得るにも、その上でどんな家じまいをするかを考えるのにも、信頼できるプロの助けを借りることをおすすめします。
まとめ
2024年に法律が改正されて、不動産を相続した場合には名義を変更する「相続登記」が義務化されました。それによって遺産を相続した場合に、親の家だけ放ったらかしにする、ということができなくなりました。相続した家が不要なら、必ず家じまいをしなければならなくなったのです。
ただ、一口に家じまいと言っても、どんな家じまいが最適かはその人によって異なります。すぐにでも処分したいという人もいれば、リノベーションして付加価値を高めてから売りたいと考える人もいますし、更地にしたいという人もいるでしょう。
その判断の決め手の一つとなるのが、家の査定です。
しかし家を正確に査定してもらうためには、その家の情報をしっかりと把握しておかなければなりません。家の査定をお願いする前に、物件調査をする。自分で調査するのが難しいのであれば、不動産のプロに相談する。
それが、家じまいのための第一歩です。
家の査定を依頼する時には、プロに相談しながら物件調査を行う。査定をもとにベストな家じまいについても、専門家に意見を求める。
家じまいは、これからますます一筋縄ではいかなくなることが予想されます。自分一人で問題を抱え込むのではなく、ぜひプロに相談して、自分の望み通りの家じまいを実現させてください。