相続になったときの注意点

相続になったときの注意点

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相続する不動産に住む人が誰もいない場合、その家の家じまいを考えなければなりません。
預貯金や株式などであればそのまま受け取れば良いのですが、住む予定のない家を放ったらかしにはできないからです。
しかし相続した不動産の家じまいには、注意しなければならないポイントがいくつか存在します。
では、不動産を相続した場合の注意点について見ていきましょう。

不動産を相続することになった場合、真っ先に考えなければならないのはその出口、つまりその不動産をどうしたら良いのか、という点です。
なぜなら不動産は現金などと違って簡単に複数人で分けることはできず、ただ単に所有するだけでも税金などのコストが発生するからです。
一方で不動産は相続物の中でも資産価値が高いことが多いため、判断を誤ると大きなトラブルの原因ともなり得ます。
そのため不動産を相続する場合には、まずその出口を考えることが大切です。

事例

例えば、弊社で受けた相続不動産に関する相談は、以下のような状況でした。

  • 相続人:母、娘二人
  • 不動産:戸建木造店舗、駐車場(共有持分)、放置された林と土地
  • 不動産も含めた遺産総額:約一億円

相続を申告するにも、まずはこれらの不動産を誰が相続するのかを決めなければなりません。現金は高齢の母親に渡すつもりとのことですが、不動産をどうするか。
資産価値がほとんど無い林と土地は別にして、娘二人が店舗と駐車場をそれぞれで相続するというわけにもいきません。
というのも、貸し出している木造店舗と駐車場では収益も異なるからです。

さらに店舗をこのまま貸し続けるのであれば、相続した人が大家として管理しなければなりません。築30年の木造の店舗は今後、修繕も必要になってくるでしょう。賃貸契約などの細かな部分も、相談者たちは全く分からないとのこと。こうした物件を相続しても、後で大変になることは目に見えています。

ではいっそのこと、不動産を全て売却して3人で分けるという手もあるのですが、そうすると今度は相続税の問題が生じます。本件の資産総額はおよそ1億円ですから、それを現金にして3人で分けると、その分だけ相続税も多くなる。不動産よりも現金の方が相続税の税率が高くなるからです。
結局のところどうしたら良いか分からない、というわけで、弊社に相談に来られたのです。
まずは相続する不動産をどうするか。その出口が見えなければ、何も決定することはできません。

この事例からも分かる通り、不動産を相続する場合にはまずその出口を考えることが大切です。
主な出口戦略は、次のようになるでしょう。

  1. 相続した家に移り住む
  2. 売却する
  3. 解体する
  4. 空き家として活用する

どの出口を選択するかは、相続する不動産や相続人の状況によって異なります。しかしいずれにしても、以下のポイントに注意しながら検討なさってください。


上の事例のように相続する不動産の価値が異なってたり、相続人が複数人いる場合は、とりあえず名義を共有にして相続するという考え方もありますが、あまりおすすめはできません。
なぜなら不動産の共有名義には、次のようなデメリットがあるためです。

  • 一度共有名義にすると、後から変更することが難しい
  • 売却するには全員の同意が必要
  • 相続人が亡くなった場合にさらに権利が複雑化する

不動産を共有名義にすることには、相続人同士の同意が得やすいというメリットもあるのですが、基本的にはデメリットの方が大きいため、最近は共有名義にすることはほとんどありません。
アパートを相続する場合などは共同名義にすることも多いですが、家賃や管理のことで揉めることも少なくないので、やはり単独名義にするのが賢明でしょう。
動産を相続する場合には、まず単独名義にすることを前提とした上で、その出口を探るようになさってください。


よくよく検討した結果、相続した不動産を売却するという決定を下すこともあるでしょう。
ただしその場合でも、いつ売却するか?というタイミングをしっかりと見極めてください。
というのも、不動産の資産価値は路線価で計算するのですが、それはあくまで目安であって、実際の販売価格とは異なる場合も多いからです。

例えば、路線価で同じ4,000万円の家だとしても、地方に建つ大きな戸建てと、都心のマンションの部屋とでは、どちらが価値が高いでしょうか?
地方では空き家が増加し、家を売るのがますます難しくなってきています。それならば、売れる時に売ってしまった方が良いとなるかもしれません。

一方で都心のマンションならば、その資産価値はこれからも上昇するかもしれません。それならば不動産のまま相続して、賃貸物件として活用しながら、様子を見て売却するという決断も有り得ます。
このように路線価だけでその不動産の価値を計り知ることは難しいため、その資産価値を正しく見極めることが重要です。それによって、その不動産にとっての最適な出口も自ずと見えてくるでしょう。


相続する不動産の正しい価値を推し量るのも、それを元に家の出口を考えるのにも、悩んだらぜひ不動産のプロに相談してください。
この点については「査定を依頼するときの注意点」、また「解体を依頼するときの注意点」でも説明しましたが、不動産に詳しくない人が家じまいにまつわるあらゆる事柄を自分一人で判断・決断するのは、本当に大変なことだからです。

例えば、相続した家を売ったほうが良いのか、そのまま持ち続けたほうが良いのか。
売るにしても実際にいくらで売れるのか、解体して土地のみで売ったほうが良いのか、家付きでも売れるのか。
そのまま持ち続ける場合には、将来的な売却を見据えて耐震補強や断熱施工をした方がいいのか、それともリノベーションする価値が本当にあるのか、等々。

相続した不動産のベストな出口は家の状態や家族の事情によっても異なるため、専門家のアドバイスが不可欠です。決断するのが難しいのは、出口が複数あるから。
であるならば、正しい出口を見つけ出せる不動産のプロに相談するのが、一番の近道ではないでしょうか。

相続の際には、相続財産や債務などをもれなく把握した上で、必要な相続税を納めなければなりません。
相続税には基礎控除が適用されますが、相続財産が基礎控除を超える、もしくは超えるかどうか良く分からない場合、さらには相続税の計算や必要な書類の作成などのために、相続時には税理士に相談するのが一般的です。
しかし相続財産の中に不動産が含まれる場合には、税理士に依頼する前に、まずは不動産のプロに相談なさってください。

なぜなら、税理士は確かに税の専門家ですが、不動産のことはあまりよく分かっていないからです。
上でも説明しましたが、相続した不動産の価値を査定するには、路線価や固定資産評価を用います。税理士もこの路線価ではじき出された価格をもとに相続税を計算するわけですが、路線価が必ずしも不動産の価値を正確に表しているわけではないことも説明した通り。
上の例で言えば、田舎の戸建ても都心のマンションも、路線価が4,000万円ならば、税理士はその価格だけで判断します。

しかし将来的な価値も含めた不動産の価値は路線価だけでは分からないため、不動産についてはまずは不動産のプロに相談して、ふさわしい出口を探ってほしいのです。

もし相続する不動産が田舎の戸建てで誰も住む人がいない場合、不動産のプロならば売却できる家なのかどうか、更地にして売却した方が良いのか、それとも他の出口があるかを探ることができます。
都心のマンションを相続するならば、売却した方が良いのか、賃貸物件として活用できるのか、そのためにはどうしたら良いのか、といった提案を行えます。

税理士に相談しても、不動産に対するアドバイスは期待できません。
餅は餅屋。
不動産を相続するならば、不動産についてはそのプロに相談する。それが当然ではないでしょうか。
ほかにも例えば、相続する不動産が複数ある場合や、その不動産が収益不動産の場合など、税理士ではその不動産を売却したら良いのか、または活用したら良いのかといった判断を下すことはできません。

不動産のプロならば路線価だけではなく、家の状態や立地、将来的な展望などの総合的な観点から、相続人にとって最もふさわしい家の出口を提案できます。
その上で、税理士と相続について相談すれば良いのです。

相続する家に住む予定の人が誰もいない場合、どうやって家じまいをしたら良いのかを考えなければなりません。相続人に最も適した家じまいのためには、その出口を考えることが重要です。
でもその出口が分からなくなったら、ぜひ不動産のプロに相談してください。

その上で、税理士に相談する。相続も家じまいも人生の中で何度も経験することでもないので、どうしたら良いのか途方に迷ってしまうでしょう。だからこそ、その道のプロに相談して、後悔のない決定をしてほしいのです。

結論

不動産を相続する場合には、まずその不動産をどう扱ったら良いのかという出口を考える。出口に悩んだら、不動産のプロに相談する。税理士に相談するのはその後で。

不動産は相続物の中でも資産価値が高いことが多いため、慎重を期して扱わなければなりません。
そのため不動産を相続する場合には税理士にお願いする前に、まずは不動産のプロに相談して、ベストな家じまいの方法を一緒に考えてください。

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