基本のキ!なぜ冬に家は寒くなる?

家の断熱について考える前に、冬になるとどうして家の中が寒くなるのか?その原因を探ってみたいと思います。

「え?冬に寒くなるのは当たり前でしょう??」

と思われるかもしれません。

確かにその通りではあるのですが、どうしてそうなるのか?その理屈を知ることはとても大切です。

原因(理屈)を知らなければ、有効な対策を立てることもできないからです。

では、どうして冬になると家の中は寒くなるのか、そして逆に夏に家の中が暑くなる原因を探っていきましょう。

熱の伝わり方

熱の伝わり方は、次の3通りの方法があります。

1.伝導
2.対流
3.放射

伝導は物を伝わって熱が移動することで、熱伝導とも呼ばれます。

湯たんぽに手を触れると、じんわりと温まりますよね?

これは熱伝導によって、湯たんぽの熱が手に移動することによって生じる現象です。

対流とは、暖められた(あるいは冷たくなった)液体や空気の動きによって熱が移動する現象のことをいいます。

暖められた水や空気は上へ移動し、代わりに冷たい部分が下へ移動します。お風呂を沸かした時に、上の部分だけ温かくて下は冷たいという経験を誰もがしていますよね?これが、対流です。

暑い時に風が吹いて気持ちが良いのも、エアコンで暖かくなったり涼しくなったりするのも、対流のおかげです。

そして電磁波で熱が伝わることを放射と言います。夏に日陰に行けば涼しく感じますし、逆に冬に日向に出ると暖かく感じます。これは、太陽の熱エネルギーが電磁波で地球まで届いているからこそ生じる現象です。

考えてみてください。

太陽と地球は約1億5000万kmという、途方もない距離で隔てられています。

そしてその間の宇宙空間は、ほぼ絶対零度(これ以上は気温が下がらないということ)の約-270℃。

これほど距離が離れていて、しかもその間はとてつもない冷たい空間であるにも関わらず、どうして太陽の熱が地球に届くのか?それは直接の熱エネルギーではなく、電磁波で地球に送られているからです。

電磁波は伝導や対流とは異なり、宇宙空間のような何も無い空間でも伝わります。

そしてその電磁波が物質にあたると吸収され、熱に変わります。

電子レンジが物を温められるのも、この電磁波の働きによるもの。また炭火が直接火を出さなくてもお肉が焼けるのも、電磁波による放射のおかげです(赤外線も電磁波の一種)。

熱の伝わり方は、この3つ。逆に言うと、この3つの方法でしか熱が伝わることはありえません。

そしてもう一つ大事なことは、熱は必ず熱いところから冷たいところに移動し、一定の温度に達するとそれ以上は変化しないということです。2つの水槽をホースで繋いで水が移動できるようにすると、水面の高さは同じになりますよね?ちょうどそれと同じ理屈です。

これを、熱量保存の法則と言います。

とはいっても、何も難しい話ではありません。私たちが体感として知っている現象です。

温かいコーヒーの入ったコップを手で持つと、ほんのり暖かくなりますよね?これは、コップの持つ熱エネルギーが伝導によって手に伝わっているからです。しかし、いつまでも手の表面温度が上がることはありません。一定のところで手の表面温度とコップの温度は等しくなります。日常生活ではこのことを「コーヒーが冷めた」と言うわけですが、物理学的に見るとコップの熱エネルギーが手に移動し、一定の温度で落ち着いているわけです。

冬の寒い戸外ではコップの中のコーヒーは冷たくなりますが、夏の暑い時期にはそこまで冷たくなりませんよね。ぬるくなるくらい。これは、コップの中のコーヒーと外気温との間で温度的な釣り合いが取れているから、ということなのです。

この3つの熱の伝わり方と熱量保存の法則は、家の断熱について考える時には切っても切り離せない大切なポイントです。

これからもたびたび出てくると思いますので、ぜひ覚えておいてください。

冬に家の中が寒くなるのはなぜか

熱の伝わり方について理解できたところで、本題に入りましょう。

冬に家の中が寒くなるのもこの熱の伝わり方、そして熱量保存の法則と直接関係しています。

熱の伝わり方には伝導、対流、放射の3つがありますが、家の中の温度へ影響を与える割合はそれぞれ異なります。

伝導はおよそ5%とされていて、あまり考慮する必要はありません。

一方で対流は約20%、そして放射が75%と言われています。

つまり、家の中が寒くなる一番の原因も放射というわけです。

もう少し、噛み砕いて説明しましょう。

熱は必ず、温度が高いところから低いところへ移動します。

冬の間は基本的に家の中の温度が高いため、その熱が外へと移動するわけです。そして何も対策しなければ家の中と外の気温は釣り合おうとしますから、外気温が低ければ低いほど、家の中も寒くなります。

放射による熱移動は物質を介しませんから、放っておくと、家の中の熱(暖かさ)は外へ逃げていくわけです。

これが、冬に家の中が寒くなる理由。放射の働きが一番の原因です。

さらに、対流も関係してきます。

家に隙間が多いと、せっかく家の中を暖めても空気がどんどん外に流れていきます。考えてみると当たり前の話ですが、空気の流れによって熱が逃げて行ってしまいます。

さらに家の中でも暖められた空気は上に上がり、冷たい空気は下に下りますから、室内でも対流が生じるわけです。暖房をたいているのに足元が冷たく感じる理由が、これです。

夏は逆に、家の外から中へと熱エネルギーが移動します。

窓を閉め切っている場合は熱がこもり続け、室温も上昇していきます。

窓を開ければ対流で熱が移動しますから、涼しくなるわけですね。

では、エアコンを使って涼しくなるのはどうしてでしょうか?

エアコンが冷たい風が吹き付けるから…では実はなく、部屋の中の熱を外に強制的に追い出しているからです。

エアコンの室内機は部屋の中の空気を集め、冷媒に乗せて室外機へ送ります。その空気は室外機の中で圧縮・高熱化(空気は圧縮されると熱くなります)され、外へ吐き出されます。実際、室外機からは暖かい空気が出ていますよね。その時、熱が放出された空気は冷たくなって室内機へ移動し、冷風として送り出される。エアコンは部屋の中の熱をどんどん外に外に追い出すことによって、室内を涼しくしているのです。

ここで注目すべきなのは、家の中が熱くなったり寒くなったりするのは熱の移動による結果であるということ。

家の断熱について考える時の、基本でとても大切なポイントです。

家の断熱の大切さ

熱の伝わり方と家の中が寒くなったり熱くなったりする理由が理解できると、家の断熱の大切さが腑に落ちるのではないでしょうか。

何もしなければ、自然の摂理として家の中の熱はどんどん移動してその結果、冬は寒くなり、夏は暑くなるわけです。

それを食い止めるのが、断熱というわけです。

断熱とは文字通り「熱を断つ」ということ。

熱を伝わりにくくする(移動しにくくする)ことによって、夏は涼しく、冬でも暖かい家にするのです。

家の断熱性能とは、どれだけ熱の移動を食い止めるかということにほかなりません。

冬ならば、家の中の熱をなるべく外に逃げ出さないようにする。逆に夏は外の熱が家の中に入り込まないようにする。

これが断熱の基本的な考え方です。

その上で、エアコンなどの冷暖房機を使って室温をコントロールしていく。

住宅の断熱性能を高めれば、その分だけ冷暖房費も下がるというのは自明の理というわけ。

その点を、自動車の例で考えてみましょう。

夏の間、駐車している車内はとても暑くなりますよね。

これは、放射によって太陽の熱が車内へ伝わるため(伝導も関係しますが、一番大きいのが放射です)。

車は気密性が高く、暖められた空気が外に出ていかないため、どんどん車内の温度は上がっていきます。

同じことを、家にもすれば良い。

家の気密性と断熱性を高めて、家の中の熱を外に逃げ出さないようにすれば、自然と家の中は暖かくなるわけです。

断熱だけではなく、気密性も大切なのはそういうわけです(気密については別に取り上げます)。

まとめ

何もしなければ、家の中は冬は寒くて夏は暑くなります。

当たり前のことではあるのですが、どうしてそうなるのか?その理屈を理解することによって、取るべき対策が自然に見えてきたのではないでしょうか。

伝導、対流、放射という熱の伝わり方と、熱は熱いところから冷たいところへ移動し、やがて同じ温度に落ち着くという自然の法則は、人間には絶対に覆すことはできません。

私たちにできるのは、その仕組を理解して必要な手を打つこと。

家の断熱性能を高めることによって、家の中と外との熱の移動を可能な限り抑えることができます。その結果、夏は涼しく、冬は暖かい家にできるというわけです。

ではこれからさらに、家の断熱性能を高めるために私たちができることと、どんな選択をしたら良いのかを考えていきましょう。

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