高断熱住宅は夏に暑くなる?

高断熱住宅は家の中の熱を外に逃さないことによって、冬でも暖かく健康的に過ごすことができます。

高断熱住宅が冬でも暖かいというのは分かるけれど、それでは夏は逆に暑くなるのではないか?というのは、もっともな疑問です。

結論から言えば、高断熱住宅は何も対策しなければ夏に暑い家となってしまいます。

ではその原因と対策について、一緒に考えてみましょう。高断熱住宅が熱に厚くなりうる原因

高断熱住宅が夏に暑くなりうる原因

高断熱住宅が夏に暑くなってしまうのは、いくつかの原因があります。

原因①:日差し

夏の強烈な日差しが室内に入ると、当然ですが部屋の中の温度も上がってしまいます。

「基本のキ!なぜ冬に家は寒くなる?」でも考えましたが、熱は必ず熱いところから冷たいところへ、そして家の中へは主に放射の形で熱が移動します。

部屋の中が日差し(放射熱)で暖められると、本来ならばその熱は低い方(室外)へ移動するはずです。しかし高断熱住宅では熱の移動を遮っているため、室内の温度は外へ逃げられません。そのため、放っておくと室温はどんどん上昇してしまうというわけです。

それが冬でも暖かく過ごせる理由なのですが、夏には逆に暑くなりすぎてしまうのです。

原因②:室内の熱源

部屋の中の様々な熱源の存在も、高断熱住宅が夏に熱くなってしまう原因の一つです。

例えばパソコンや冷蔵庫などの家電製品は熱を放つことがあり、これが室温にも影響を与える可能性があります。

しかし実は一番大きな熱源は、家の中で生活する私たち自身なのです。

何もしていなくても、人間はおよそ100w(ワット)の熱を放つとされています。

100wと言われてもピンとこないかもしれませんが、こたつ1台がおよそ600wと聞けば、イメージしやすいかもしれません。

部屋の中に人間が3人いれば、それだけでこたつ半分と同じくらいの熱を発していることになります。人が集まると暑苦しいというのは単なるイメージではなく、現実の話なのです。

さらに近年の建築費高騰の影響を受けて、新築物件の建坪数は確実に小さくなってきています。それだけ、部屋も狭くなっているわけですね。

部屋が小さくなるほど、そこにいる人の数が室温にも大きな影響を及ぼしてしまうのです。

原因③:外壁の色

夏に黒っぽい服を着ていると、それだけで暑く感じるのは誰でも理解できるでしょう。

それと全く同じように、家の外壁の色も温度に大きく関係します。

白っぽい外壁と黒っぽい外壁を比べると、その表面温度は10~25℃も違ってきます。

家の中から見てみると、外壁の表面温度が10℃上がると外気温が5℃上がるくらいのインパクトをもたらします。

たとえ高断熱住宅であっても、外気温が5℃も上がるとやはりその影響を受けてしまう。実際に外壁の表面温度が10℃高くなると、室温も1℃くらいは上昇してしまうようです。

高断熱住宅で夏でも快適に過ごすために必要な対策

高断熱住宅が夏に暑くなってしまう原因が分かったところで、ではどんな対策を取れば良いのかも見ていきましょう。

対策①:日射遮蔽

高断熱住宅で夏でも快適に過ごすために最も基本的で、かつ最も効果的なのが、日差しをしっかりと遮る(日射遮蔽)ことです。

日差しが入ることによって室温が上昇するのであれば、その日差しを遮れば良い。

「窓について考える」でも説明したように、高断熱住宅は南側の窓を大きくした上で庇をつけるのが大鉄則です。この庇によって、夏に南面から入る日差しを遮ることができます。

そしてそれ以外の東西北面の窓はできるだけ小さくする。家の外と中との熱の移動は、主に窓を介して行われます。そのため、夏に日差しが直接入る東西北面の窓は可能な限り小さくすることが肝要です。

東西はともかく、北面にも日差しが差し込むのか?と思われるかもしれません。

実は夏の場合は、北面にも日が差し込みます。

というのも春分と秋分には真東から日が昇り、真西へ西が沈むのですが、夏至には真東からおよそ30度北の方から日が昇り、そして真西から30度北にずれた方へ沈みます。

そのため、午後から夕方にかけてのいわゆる『西日』が、建物の北面にも差し込むのです。

そのため東西北面の窓を可能な限り小さくして、夏の日差しが家の中に入って室温が上昇することを防ぐ必要があるわけです。

逆に冬はもっぱら南面に日が低い角度から差し込みます。そのため、南面の窓を大きくして冬の日差しをたっぷり取り込むわけです。

とはいえ、例えば家の西側の景色が素晴らしいロケーションなどの場合、西側の窓を大きくしても構いません。せっかくの絶景を遮るのはもったいないですからね。ただしその場合は、窓にアウターシェードをつけるなどして日差しを遮る方法も一緒に講じてください。

対策②:エアコンの有効活用

部屋の中の温度が上がった場合、一般住宅における主な対策方法は窓を開けて外の空気を取り入れることでしょう。

しかし高断熱住宅においては、その方法はおすすめできません。

なぜなら高断熱住宅の肝は、室外と室内の環境を隔てているところにあるからです。

庇やアウターシェードで日差しを遮れば、夏でも室温が大きく上昇することはありません。

その上でエアコンを使えば、室内を快適な環境に保てます。

「基本のキ!なぜ冬に家は寒くなる?」でも考えましたが、エアコンで涼しくなるのは冷気を吹き付けているからではなく、部屋の中の熱を外に追い出しているからです。

つまり窓を開けてしまうということは、せっかく外に追い出した熱と湿度をもう一度部屋の中に呼び込むことにほかなりません。

高断熱・高気密住宅では基本的に窓を閉め切って、エアコンを上手に活用する。

それが夏でも快適に過ごす大原則となりません。

換気については「気密の重要性」で考えたように、新築住宅では24時間換気が義務付けられているので、換気のために窓を開閉する必要がそもそもありません(換気システムがしっかりと設計・運用されているのが条件)。

もちろん、外が涼しい時期や時間帯に窓を開けて外気を取り入れることは(気分的にも)全く問題ありません。

しかし夏の暑い時期には窓を閉め切って、エアコンを上手に活用なさってください。

(エアコンについては「高断熱住宅のためのエアコンの選び方」もご参照ください)

対策③:気密性を高める

高断熱住宅において、気密性を高めることも大切だということは「気密の重要性」で考えた通りです。

気密性能が高い家では空気の出入りが極端に少なくなるため、空気の流れによる家の中と外との熱の移動(対流)も少なくなります。

高断熱・高気密住宅が冬でも暖かいのはそのためですが、逆に言うと夏でも外気から熱の侵入を阻止して、室内の涼しさを保つことができるというわけです。

日射遮蔽とエアコンの有効活用によって、高断熱住宅では夏でも室内は快適な状況を作れます。そして家の気密性能が高いなら、その快適な状況を余計なエネルギーを消費せずに保つことができる。快適でかつエコな家というわけです。

対策④:白っぽい外壁にする

基本的には対策①~③をしっかり行えば、夏でも十分に快適に過ごすことができます。その上で、外壁をなるべく白っぽい色にすればさらに良し。

間違えてほしくないのは、白っぽい色の外壁にすれば家の中は涼しくなるわけではなく、しっかりとした対策を取った上で、外壁の色を考えるということです。

逆に言えば、日差しをしっかりと遮り、家の気密性能を高め、エアコンを上手に活用できるならば、黒っぽい外壁にすることも考えられるということです。

もちろん、エネルギー効率を考えれば白っぽい外壁の方が優れているのですが、せっかくの夢のマイホーム。自分の理想としている外観もあるでしょう。黒っぽい外壁が絶対にNGというわけではありません。

まとめ

地球温暖化の影響で、日本の夏の暑さも耐え難いものになりつつあります。

猛暑日どころか最高気温が40℃近くまで達することも珍しくなくなり、しかも9月を過ぎても暑い日が続いている。

昨年などは11月になっても汗ばむ日があって、私と同じように驚いた人も多いのではないでしょうか。

日本の夏はますます暑くなり、しかも長期化している。そしてそれに比例するように冬は短くなってきています。

そうした現状を考えると、家づくりにおいては冬の断熱だけではなく、夏の快適性をこれまで以上に追求することが大切になってきているのではないでしょうか。

日差しが入ったり室内に人間などの熱を発するものが存在する以上、夏は家の中が自然に暑くなることはあっても、勝手に涼しくなることは絶対にありません。

そのために、しっかりとした対策を取ることが大切なのです。

高断熱・高気密住宅は冬だけではなく、夏でも快適で健康的、かつ省エネの家となります。 そんな家づくりの方法を、引き続き一緒に考えていきましょう。

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