高断熱住宅のための結露対策

高断熱住宅って、結露しやすいんじゃないですか?

そんな質問をお受けすることが度々あります。

高断熱・高気密の家は空気の移動が少ないため、湿気がこもりやすい。それで結露も生じやすい。

そんなイメージでしょうか。

結論から言うと、高断熱住宅が結露しやすいというのは誤りです。

結露というのは自然現象なので、高断熱住宅であろうと普通の住宅であろうと、条件が整えばどこでも結露は生じます。

逆に言えばしっかりとした対策を取れば結露を防ぐことは可能であり、高断熱住宅は「結露しにくい家」とも言えるのです。

しかしそのことを理解するには、どうして結露が生じるのか?そのメカニズムや、結露を防ぐにはどうした良いのかということについて知らなければなりません。

では、高断熱住宅のための結露対策とは?

一緒に考えてみましょう。

結露による家へのダメージ

結露を単なる水滴、と甘くみてはいけません。

結露は天井や壁、床など家の様々な場所にカビやサビなどのダメージを与えます。

さらにカビはダニの餌にもなるため、喘息やアレルギー症状を引き起こすトリガーに。住んでいる人間の健康被害をも引き起こしかねません。

欧米では結露が生じる家は欠陥住宅とみなされるということを考えると、決して軽く考えてはいけないということが良く分かるのではないでしょうか。

さらに木造住宅で致命的なのが、シロアリ。

シロアリは乾燥に弱く高い湿度に保たれている場所を好むため、結露は絶対に防がなくては行けないのです。

結露とは

ではそもそも、結露とは何でしょうか。

結露とは、室内の空気が外気との温度差によって冷やされた結果、空気中に含まれた水分が水滴に変わる現象のことを言います。

冷たい飲み物が入ったコップやペットボトルを暑い場所に置いておくと、その周りの空気が冷やされて水蒸気が水滴になり、コップやペットボトルが『汗をかく』のが、結露です。

空気は温度(気温)によって、その中に含むことのできる水分量が決まっています。その限界(これを飽和水蒸気量と言います)を超えると、水蒸気が水へと変わるわけです。

空気は暖かいほど、たくさんの水分を含むことができます。そのため、暖められて水分をたくさん含んだ空気が急に冷やされると飽和水蒸気量も下がり、それ以上の水分を蓄えることができなくなります。それが結露という現象になって現れるというわけです。

結露のメカニズム

同じ「湿度50%」でも、気温によって含まれる水分量(絶対湿度)は異なります。

例えば、気温25℃のときの絶対湿度は11.5g/m³、10℃のときは4.7g/m³。

夏に湿度40%は爽やかに感じるのに、冬の湿度40%では乾燥しているように感じるのは気のせいでも何でもなく、空気中に含まれている水分の量が実際に少ないからです。

このことが分かると、冬の室内で結露が起こりやすい理由も容易に理解できるでしょう。

室内が寒いと、暖房をつけて部屋の中を暖めます。

その中で人間が生活すると、吐く息で室内の空気中の水分量が上昇します(4人家族の場合、1日に発生する水蒸気の量は約10Lと言われています)。

さらに冬は乾燥しているので加湿器も稼働させるでしょう。そうすると、暖められた空気の中にたくさんの水分が含まれていきます。

その空気が窓ガラスなどの冷たい部分に触れて急激に冷やされると、冷たい空気が含むことのできる水分量は暖かい空気よりも少ないためすぐに相対湿度100%に達し、結露するというわけです。

ポイントは、水分量と気温差。

たくさんの水分を含んでいる空気が気温差によって急激に冷やされると飽和水蒸気量も小さくなり、結露となります。

逆にいくら気温差が大きくても、そもそもの水分量(絶対湿度)が少なければ、結露は生じません。人がいない部屋では結露が生じにくいのはそのため。

また気温差が小さくても、水分量が多くなれば結露は生じえます。例えばキッチンでお湯を沸かせば、その周囲は容易に結露するでしょう。お湯から生じた水蒸気によって、相対湿度が100%に達するからです。

私たちが普段目にしている結露は、「表面結露」とも言います。

空気中の水蒸気が窓ガラスなどの、目に見える部分で冷やされて結露する。つまり表面に現れる現象のため、そう呼ばれているわけです。

しかし家の中で生じる結露にはもう一種類、「内部結露」というものも存在します。

表面結露が冬に生じやすいのに対し、内部結露は夏でも起きるのが特徴です。

内部結露のメカニズム

内部結露とは、壁の内側にできる結露のこと。目に見えないだけに表面結露以上にやっかいな存在です。

「基本のキ!なぜ冬に家は寒くなる?」で、熱は必ず暖かいところから冷たいところへ移動することを学びました。同じように湿度も水分(絶対湿度)の多いところから、少ないところへと移動します。

夏は基本的にエアコンを効かせる室内の方が室外より絶対湿度が低いので、水蒸気は壁を通して外から室内に移動してきます。水蒸気の分子は非常に小さいので、木造の家の壁も通り抜けてしまうんですね。

そうすると壁の内側の、室内に接する部分で空気が冷やされて(室内はエアコンで涼しくなっているので)、壁の中で結露してしまうわけです。

冬は逆に室内の水蒸気が外へ逃げようとし、壁内部の室外に近い部分で結露する危険があります。

内部結露は建物のダメージだけではなく、家の断熱性能にも大きな影響を及ぼします。

壁の内部の断熱材は乾いているからこそ、その真価を発揮することはあまり知られていません。

キルト製の鍋つかみを使えば、熱い鍋でも難なく持ち上げることができますよね。それは、キルト内部の空気の層が熱を遮断するから。

では、その鍋つかみを水に濡らして鍋を持つとどうなるでしょうか?

水は空気よりもはるかに熱を通しやすいので、大やけどを負ってしまいます(絶対に試さないでくださいね!)。

同じように断熱材も水分を含むとその性能が落ち、せっかくの高断熱住宅も台無しというわけです。

結露を防ぐ方法

結露のメカニズムが分かれば、それを防ぐ方法も見えてきます。

暖められて水分を多く含んだ空気が冷されることによって、結露が生じます。

そのため、いかに空気と熱の移動を防ぐかが鍵となります。

表面結露を防ぐ方法

家の中で表面結露が一番生じやすいのが、窓です。

「窓について考える」でも説明したように、日本のほとんどの家の窓枠にはアルミサッシが使われていますが、アルミは非常に熱伝導率が高い(熱を通しやすい)。

そのため冬になると窓枠が冷やされ、そこに室内の暖かい空気が触れて結露が生じるわけです。

その窓の結露を防ぐのに最も効果的なのが、窓を替えるること。

新築の場合には樹脂サッシの複合ガラス窓にすることによって、室外からの熱の移動を防げます。窓自体が冷えないので、結露が生じることもありません。

既存住宅の場合は窓枠を変更するのが難しいため、同じく樹脂サッシ+複合ガラスの内窓をつけることをおすすめします。

手軽に家の断熱性能を高められる上に結露も防げるので、ぜひ実践なさってください。

内部結露を防ぐ方法

新築住宅の場合には、壁の内側にはポリエチレンシートなどの防湿シートを施工することによって内部結露を防げます。

しかし適切な防湿シートが使われていなかったり、施工が不十分な場合は内部結露が生じる可能性があるため、しっかりとした業者を選ぶことが大切。

既存住宅の場合には壁を剥がしてまで断熱性能を高める必要があるかどうかが、判断の分かれ目となるでしょう。

すでに内部結露が生じていて大規模なリフォームが必要で無い限り、その他の方法で家の断熱性能を高めることが現実的かもしれません。

その点については、ぜひ「高断熱の家づくりとコストの考え方」をご覧ください。

高断熱住宅と結露について、どんな考え方をしたら良いのか?

空気中の水分の量と、室内外の温度差によって結露が生じる。

ですから結露を防ぐには、家の中の温度差を防ぐことと、湿度を適正に保つことがポイントとなります。

ということはつまり、高断熱住宅は結露が生じにくい家ということが分かるのではないでしょうか。

高断熱・高気密住宅は夏でも冬でも一定の温度を保ち、家の中と外との空気の移動が少ないため、必然的に結露が生じにくいのです。

その上、新築住宅ならば24時間換気システムが備えられているので、効率体な換気によって湿気がこもることもありません。

そのためこれから家を建てることを考えている人は結露のことを心配するのではなく、ぜひ高断熱の家づくりを実現させることに注力なさってください。それが、結露を防ぐ家ともなるからです。

また既存住宅で今まさに結露に悩んでいる人にも、高断熱リフォームをおすすめしたい。窓を替えるだけでも表面結露を防げますし、何よりも室内環境が劇的に改善されるでしょう。

結露は単なる水滴ではなく、カビやハウスダストの原因ともなる家の危険な『症状』。

家の高断熱化によって結露を防ぐことは、まさに「健康的で快適な家づくり」にほかならないのです。

【結露についての基本的な考え方】

高断熱住宅は結露しにくい家でもある
結露を防ぎ、快適で健康的な暮らしのためには家の高断熱化が不可欠

「高断熱住宅は結露しやすい」というイメージは間違いであること、むしろ高断熱住宅こそ、夏でも冬でも快適で結露しにくい健康的な家であるということを覚えておいてください。

高断熱住宅のための結露対策について、どんな選択をしたら良いのか?

しっかりとした高断熱住宅にすれば、自ずと結露は防げます。

そのためやはり新しく高断熱住宅を建てるにしても、高断熱リフォーム(リノベーション)を施すにしても、しっかりとした業者を選ぶことが大切です。

よくネットや不動産会社の営業マンが「うちは〇〇を使っているので結露しません!」というの見聞きしますが、そういう業者は避けたほうが無難。

というのも結露は自然現象であり、条件さえ揃えば必ず結露は起きるからです。

例えば、JIO(日本住宅保証検査機構)がネット上でも公開している「内部結露計算シート」というのがあるのですが(興味のある方はぜひ検索なさってください)、それを使うと気温や湿度はもちろんのこと、使っている資材や建材などの様々な条件の変動によって、結露は起こりうることが良く分かります。

これさえ使えば絶対に結露しないという、魔法の建材というものは存在しません。

むしろ、結露が起きるメカニズムをしっかりと理解し、それに一つ一つ対処していくことが大切なのです。

そのため、「結露対策はしっかりしています!」という業者に対しては、ぜひ「内部結露計算シートを使って計算したことがありますか?」と尋ねてみてください。

計算シートを使ったことがないような業者は、結露のことを本当の意味では理解していないのです。

【結露対策のために、どんな選択をしたら良いのか?】

内部結露計算シートを使ってしっかりと対策を取れる業者を選ぶ
業者選びに困ったら、専門家に相談する

新築の高断熱住宅を建てるにしても、既存住宅をリフォームするにしても、しっかりとした業者を選ぶためには確認しなければならないことが多々あります。結露対策もその一つ。内部結露計算シートを知らない、知っていても使ったことがないような業者は避けるほうが無難。

とはいえ、全ての条件をクリアしている業者を見つけるなんて無理だ!と思われるかもしれません。その場合にはぜひ、家づくりの専門家で、あなたの代理人として行動してくれるプロのエージェントに相談なさってください。

まとめ

せっかく建てた夢のマイホームが、結露によってダメージを受けたり、断熱性能が下がったりしたら目も当てられません。

そのため結露対策は、家づくりにおいても重要なポイント。

基本的にはしっかりとした性能を持つ高断熱・高気密住宅なら結露の心配はほぼないのですが、条件さえ揃うと結露は起こり得ます。

そのため結露のメカニズムを理解した上で、内部結露計算シートを使いこなせる業者を選びましょう。

もしも業者選びに困ったら、プロに頼る。毎回同じようなことを言っているようで恐縮ですが、これが真理だからこそ、繰り返し述べているのです。

ぜひ結露とは無縁の快適で健康的な家で、健やかにお過ごしください。

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