高断熱住宅のためのカビ対策

結露と同様に、高断熱住宅はカビやすいんじゃないか?と心配される人も一定数いるようです。

高断熱・高気密住宅は夏でも冬でも室温がある程度一定に保たれるため、カビも生えやすいのではないか、というわけです。

確かに、室温とカビの発生には相関関係があります。

しかし結露と同じく、高断熱住宅がカビやすいというのは大きな誤解。むしろ高断熱・高気密住宅はカビが生えにくい健康的な家でもあるのです。

でも、どうしてそう言い切れるのか。

高断熱住宅がカビにくい家と言える理由と、今すぐにもできるカビ対策について考えてみましょう。

家の中にカビが生える原因

カビが生えるのには一定の条件が必要で、湿度70%以上、温度25~30℃になると発生しやすいとされています。

ここで言う湿度は「相対湿度」のことです。相対湿度と絶対湿度の違いについては「高断熱住宅のための結露対策」をご覧ください。

結露は相対湿度が100%になった時に生じます。

一方、カビは70%以上で生え始める。

つまり、カビは結露よりも生じやすいということになります。

厄介なのが、人間が反応するのは相対湿度ではなく、絶対湿度だということ。

私たちが「今日は乾燥しているな」、「今日はジメジメしているな」と感じるのは空気中にどれだけの水分が含まれているかという絶対湿度の方で、相対湿度ではありません。しかしカビが反応するのは相対湿度の方。

つまり、私たちの感覚とは別のところでカビの発生条件が整うこともあるということです。

実際に、「あれ?そんなに湿っていないはずなのにカビが生えている!」という経験はありませんか?

カビは結露よりも低い相対湿度で生え始める。

そのためカビ対策は、結露以上に気を使わなくてはならないのです。

夏のカビ

夏は湿度が高いため、カビが生えやすいというのは経験上でもよくお分かりだと思います。

実際に東京や大阪の6月~9月の相対湿度の平均は70%以上、特に7月は全国どこでも75%以上になります。

そのため夏場はしっかりとした対策を取らない限り、基本的にカビは生えるものと考えたほうが良いでしょう。

冬のカビ

意外かもしれませんが、冬でも家の中にカビが生えることがあります。

冬場は家の中が乾燥するので、加湿器を使う人も多いと思います。ウイルスは乾燥している状態が好きなので、健康面でも冬場の加湿は大切。

しかしその加湿によって、カビが生えやすくなってしまうのです。

「高断熱住宅のための結露対策」でも説明しましたが、空気を暖めるとその中に含められる水分の量も多くなります。

その暖められて水分をたくさん含んだ空気が、例えば浴室のタイルなどの冷たい部分に接すると、空気が急速に冷やされてその中に含められる水分の量が減少する(相対湿度が上昇する)。そうすると相対湿度が100%に達して結露し、その部分にカビが生じるという理屈です。

夏でも冬でもカビが生じることがあるということを考えると、やはりしっかりとしたカビ対策が必要だということがよく分かるでしょう。

家のカビによる健康被害

家の中に生じるカビは、そこに住む人の健康に様々な害を及ぼします。

・アレルギー
・シックハウス症候群
・感染症
・毒素による病気や症状
・皮膚炎
・その他

カビが生えるとカビの胞子が家の中に漂い、それが原因としてアレルギーやシックハウス症候群(鼻炎や過敏性肺炎など)を引き起こします。

またカビはその種類によって、強い毒素を含む胞子を排出するものもあります。その毒素によって頭痛や嘔吐、下痢などの症状だけではなく、肝臓障害や神経障害などの健康被害を被ることも。

さらにカビが生えるところにはダニも繁殖しやすくなるため、それもアレルギーやシックハウスの原因となります。

このように、カビはただ単に見た目に悪いだけではありません。

家は快適かつ健康的であるべき。

そのため、家の中にカビの発生を絶対に許してはいけないのです。

高断熱住宅のためのカビ対策

では、カビを防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか?

高断熱の家づくりや、高断熱リフォームを施す際に意識したい3つの点を考えましょう。

1.窓を変更する

カビ対策と結露対策は重複する部分が多い。結露が生じるとこにはカビもより生えやすくなるので、当然といえば当然ですね。

その中でも、窓を変更することはカビ対策にも非常に有効です。

浴室は別として、家の中で一番結露しやすいのが窓。

新築の場合には、その窓を樹脂サッシ+複合ガラスの窓にしてください(詳しくは「窓について考える」を参照のこと)。

リフォームの場合には、樹脂サッシの内窓をつけることがおすすめです。

その場合の優先順位は、生活時間の長い部屋(リビングなど)と、寝室から。

人が息を吐くと部屋の中の絶対湿度が上がり、結露とカビの発生条件が整うからです。

寝ている間に人間が息や汗によって失う水分量は、およそ500mlと言われています。

もし家族4人が同じ部屋に寝ているとしたら、就寝中に4Lもの水分(水蒸気)が部屋の中に漂うことになります。

冬にカーテンを開けると窓が結露でビショビショになるのは、そのためです。

カビを防ぐには、まずは結露を防ぐ。

カビは結露よりも低い湿度で発生するので、これは大鉄則です。

ただし、浴室は例外。

お風呂に入ると相対湿度は必ず100%に達するので、浴室の結露を100%防ぐのは難しい。浴室のカビを防ぐ方法については、後述します。

2.室温と湿度を一定に保つ

カビは室温25~30℃、湿度70%以上で発生リスクが高まります。

そのため、室温と湿度をそれ以下に保つことが大切。根本原因を断つわけですね。

特に夏の間は窓を閉め切り、エアコンを使って室温と湿度をコントロールしましょう。

電気代がもったいないから、または換気のためと窓を開けてしまうと、室外から湿度がどっと入り込んでしまいます。

新築の住宅なら24時間換気システムが備わっているので、あえて窓を開けて換気する必要はありません。

またエアコンもこまめにオン・オフするよりも、つけっぱなしの方が電気代の節約になります。涼しくなる時間帯なら別ですが、暑い日中に家の中にいる間はエアコンを上手に使ったほうが快適なのはもちろんなこと、カビも防げて健康的に過ごせるでしょう。

さらに気をつけたいのは、梅雨時期の室内干しです。

どうしても仕方がないことではあるのですが、夏の室内干しはせっかく下げた家の中の湿度を上げる行為に他なりません。

そのため、特に梅雨時期に室内干しには必ず除湿機もセットにするか、洗面所や浴室などの密閉されていて換気設備が整っている部屋で行ってください。

冬の間は、家の中の温度差を小さくすることが肝要。温度差によって結露が生じ、そこにはカビも発生するからです。

そのためには、家の断熱性能を高めることが何より肝心です。

新築・リフォームともにぜひこれまでの記事を参考にして、ぜひ高断熱の家づくりを行なってください。

3.家の気密性能を高める

家の気密性能が低いと、空気と一緒に水分も家の中に侵入して、室内の湿度を高めてしまいます。

気密性能が低い家とは、空気の出入りが多い家のこと。

風通しが良いと言えば聞こえは良いのですが、気密性能の低い家ではせっかく窓を変更しても、またエアコンで室温と湿度をコントロールしたとしても、湿った空気が家の中に入り込んでその効果も小さくなってしまいます。

そのため新築でも既存住宅でもまずは気密測定を行って、その上で必要な対策を施しましょう。

その点については、「気密の重要性」をぜひご覧ください。

高断熱住宅こそが最大のカビ対策

カビの発生を防ぐための方法を3つ見てきましたが、どれも高断熱の家づくりと直結するものだということに気づかれたでしょう。

高断熱・高気密の家は夏でも冬でも家の中の温度差が少なく、空気の出入りも少ないため、カビが発生しずらいのです

「高断熱住宅のためのカビ対策」と銘打っていますが、高断熱住宅こそがカビが生えにくい、快適で健康的な家づくりであるということをぜひ覚えておいてください。

生活面でのカビ対策

高断熱住宅はカビが生えにくいとはいえ、ゼロになるということではありません。

そのためここでは一般的な住宅も含めて、私たちが生活していく上で行えるカビ対策を3つ取り上げましょう。

1.エアコンを定期的に清掃する

現代においては、高断熱住宅に限らず一番カビが生えやすいのが、エアコンの内部です。

エアコンの内部は湿度・温度ともに高く、ホコリも溜まりやすいため、カビにとっては最高のねぐらになってしまうのです。

冬場の暖房だけにエアコンを使うのなら問題はないのですが(高温でカビが死滅するため)、冷房として使う限りはどうしてもカビが生えやすい条件が整ってしまいます。

内部にカビが発生したエアコンを使うということは、カビを室内に撒き散らすことと同義。

そのため、定期的なクリーニングがどうしても必要になります。

自分でできる部分には限界があるため、1~2年に一度はプロのクリーニングサービスを依頼してください。

またエアコンのオン・オフを繰り返すと空気の流れが止まるので、エアコン内部にカビが生えやすくなります。

その点でも、常時無駄なくエアコンを稼働できる高断熱・高気密住宅は有利だと言えるでしょう。

2.浴室は天井も掃除する

高断熱住宅でも、浴室はどうしてもカビが生えやすい場所の一つ。

これはもう仕方がないことなので、カビが生えたらカビキラーなどを使って掃除しましょう。

その時にぜひ覚えておいてもらいたいのは、天井も掃除するということです。

というのも、浴室内を掃除すると、カビの胞子は上に上がっていってしまう。つまり、天井に付着してそこから新たなカビが生えてしまうんですね。

そのためカビが生えたら、月に一度で良いので、天井もカビキラーなどを使ってカビの胞子を取り除いてください。

3.洗濯物は時間をおいて洗濯機へ

夏場に汗を吸い込んだ汚れ物をすぐに洗濯機に入れてしまうと、そこに湿気がたまり、洗濯機内部にカビが生えやすくなってしまいます。

最近人気のドラム式の洗濯機は水蒸気が逃げにくいため、特に気をつけてください。

洗濯物は洗う直前まで洗濯かごに入れておく。

なんだかおばあちゃんの知恵袋みたいになってしまいましたが、カビを防ぐという点ではとても大切なことなので、これもぜひ覚えておいてください。

まとめ

高断熱住宅は気密性が高く、効率よく換気がなされるため、カビの生えにくい家でもあります。

また夏でも冬でも部屋ごとの温度の差が大きくならないことも、カビの発生を防ぐのに役立ちます。

つまり、しっかりとした性能のある高断熱・高気密住宅を建てることが、一番のカビ対策ということ。

昔の家は気密性も断熱性能も低かったので、ある意味ではカビが生えにくい環境でした。冬にまるで冷蔵庫のように寒なってしまうような家では、カビも確かに生えないでしょう。

しかし現代の家はみなある程度の断熱性能を備え、隙間も(昔に比べれば)少なくなりました。

そのため、結露やカビができやすい状況になっています。

だからこそ、さらに断熱性能と気密性能を高めて、カビが発生しない環境を整えることが大事なのです。

カビは気温25℃以上、湿度70%以上という高気温・高湿度な環境を好みます。

それは私たちにとっては、不快な環境でしょう。

気温18~23℃、湿度40~60%という人間にとって快適な環境を保つことが、カビ対策には一番効果的。

そしてそれこそが、高断熱住宅が提供する住まいのカタチそのものなのです。 カビとは無縁の快適・健康的な住まいを、ぜひ手に入れてください。

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