高断熱住宅のためのエアコンの選び方【後編】

「高断熱住宅のためのエアコンの選び方【前編】」では、主にエアコンの最適設計について説明しました。

ここではそれを踏まえた上で、どんなエアコンを選んだら良いのかを一緒に考えたいと思います。

高断熱住宅のためにどんなエアコンを選ぶべきか

前編でも述べたとおり、エアコンも機種によって省エネ性能には差があります。

そのため自分の家に最適な、かつなるべくエコなエアコンを選びたい。

また高断熱リフォームの場合は、例えば小屋裏エアコンのような大がかりな空調デザインまで施すのは難しいでしょう。

それでも自分の家にピッタリ合ったエアコンを選ぶことによって、消費エネルギーを抑えながら家の中を快適に保てます。

では高断熱住宅のための、最適なエアコンの選び方とは?

次の2つのポイントを意識してください。

  1. エアコンのカタログの見方
  2. エアコンの設置方法

では、それぞれについて順番に見ていきましょう。

1.エアコンのカタログの見方

普通の人が家電量販店でエアコンを選ぶ時、検討の材料となるのは主に「◯畳用」という表示ではないでしょうか。

しかしこのエアコンの畳数表示は1964年に制定されたもので、それ以来まったく変更されていないことをご存知の方は少ないでしょう。

その頃に建てられた家は、断熱性能がほぼゼロに等しい。

つまり高断熱住宅用のエアコンを、「◯畳用」という物差しだけで選んではいけないということです。

そのためこの機会にぜひ、エアコンのカタログ(スペック)の見方を学んでおきましょう。

電気量販店や通販サイトで見るようなエアコンのカタログは、このようなものでしょう。

この中で見てほしいのが、赤で囲った「電圧(V)」、「能力」、「消費電力」、そして「通年エネルギー消費効率(APF)」です。

(APFについては、「高断熱住宅のためのエアコンの選び方【前編】」をご覧ください)

同じメーカーの同機種のエアコンであっても、畳数の違いによってこれらのスペックが異なってきます。

分かりやすくするために、ダイキンの同一機種のスペックを比較してみましょう。

(ダイキン公式HPより抜粋)

まず大きく分けて、100Vと200Vという電圧数の違いで2つに分けられます。同じ14畳タイプでも200Vのエアコンの方がAPFが優れている(つまり省エネ)ことが分かります。

次に、冷暖房能力(kW)を見てみます。

例えば6畳用で暖房能力が「2.5」とあるのが、定格能力と呼ばれるものです。定格能力は、一般的な条件で使用した場合に、そのエアコンが安定して出せる能力を示します。畳数が増えるにつれて、定格能力も大きくなっていくことが分かります。

しかしここで注目したいのが、最大能力です。6畳用で言えば(0.6~6.2)となっている「6.2」が、そのエアコンの最大暖房能力。つまりそのエアコンが出せる最大パワーということになります。

この最大能力で見てみると、6畳~29畳まで様々あるエアコンでも、3つのタイプしかないことが分かるのではないでしょうか。

つまり、「6畳と8畳」、「10畳~14畳(100V)」、そして「14畳(200V)~29畳」です。これらのタイプ内で、暖房最大能力にほとんど違いはありません。しかし畳数が大きくなれば、それだけエアコンの値段も高くなります。

14畳(200V)と29畳で最大能力はほとんど変わらないのに、値段は全然違うのはおかしいと思いませんか?

さらに消費電力を見てみると、暖房最大能力は同じでも、14畳(200V)タイプの方が29畳タイプよりも消費電力が少ない。つまりそれだけ省エネだということです。APFで見てみても、14畳(200V)タイプが「7.1」で29畳タイプが「5.2」ですから、かなり違いますよね。

冷房能力は暖房能力とは異なり、最大冷房能力はなだらかに上昇しています。

ただし、暖房能力や冷房消費電力の最小値と最大値をそれぞれ比較してみてみると、ただ単にプログラムでリミッターをかけているだけではないか、という疑惑が拭いきれません。

車でも国産車の最高速度は180km/hに制限されていますよね?あくまでもメーカーの自主規制のようですが、明らかにそれ以上の速度が出せる車でもリミッターがかけられている。それと同じことでしょう。

結論として、エアコンはどれだけ種類が大きくても、基本的には3つのカテゴリーしかないことが分かります。

つまり、

1.6畳と8畳
2.10畳~14畳(100V)
3.14畳(200V)~29畳

この3つのカテゴリーです。

その中でよりコスパが良くて、かつ省エネなエアコンを選ぶとすると、「1」のカテゴリーでは6畳タイプ、「2」のカテゴリーでは10畳タイプ、そして「3」のカテゴリーでは14畳(200V)タイプということになります。

ここではダイキンのエアコンで比較してみましたが、他のメーカーでも大きな違いはありません。

畳数だけではなく、カタログの中身をしっかり確認した上で、自分の家に最適でかつ省エネなエアコンを選んでください。

2.エアコンの設置方法

エアコンは性能だけではなく、どこに設置するかによっても快適さは大きく変わってきます。

というのも、エアコンは前方へ風を送るのは得意なのですが、左右へは届きにくいからです。

そのためもし横長の部屋であれば、辺の長い方の中央に設置するのではなく、短い方の壁に設置するほうが効率的ということになります。

また室外機の設置場所もしっかり考えなければなりません。

たまに道路側から見た建物の正面、または目に入る場所にエアコンの室外機が設置されている家を見かけますが、デザイン的には全くおすすめできません。

室外機はなるべく目立たない場所に設置する。これが基本です。

高断熱住宅のための最適なエアコンとは?

高断熱住宅に最適なエアコンを選ぶには、畳数だけでは判断できないということが良くお分かりになったと思います。

もちろん畳数も参考になりますが、それ以上に冷暖房能力やAPFの数値も確認しなければなりません。

上の表で言うと、6畳用のエアコンでも暖房の最大能力は6.2kW、つまり6200Wということになります。

コタツ1台が約600Wですから、およそコタツ10台分の能力があるということになりますね。6畳の部屋に、さすがにそれはオーバースペックではないでしょうか。

そういうことから考えても、小屋裏に設置した1~2台のエアコンで家全体の空調をカバーするというのは理にかなっているのです。

経験則で言えば、30坪ほどの家で小屋裏エアコンの場合、14畳タイプ(200V)のエアコン一台で十分なことが多いですね。

とはいえ、実際にその家にどの程度のスペックのエアコンが必要なのかは、「暖房負荷計算」によって求めることができます。

一般の人がそこまで理解している必要はありません。しかし工務店の人が知らなければ、本当に必要なエアコンのスペックは算定できないということになります。

そのため、せっかく高断熱住宅を建てるのであれば、「暖房負荷計算をしたことがありますか?」と聞いてみてください。

暖房負荷計算を知っている、実際に計算したことがあるならば、その人のおすすめするエアコンを購入して問題ないでしょう。

暖房負荷計算を知らない、したこともないという業者の「エアコンは余裕をみて◯畳タイプがおすすめですよ」という言葉はちょっと信用できない。

ぜひ一度、別の専門家に相談してみることをおすすめします。

新築の場合はエアコンも一緒に購入しますが、高断熱リフォームでは、エアコンの優先度はそこまで高くないでしょう。

とはいえ、リフォームを考えている家ならばエアコンの交換時期も近いかもしれません。

もしも窓だけではなく、屋根と床の断熱・高気密化まで手を付けるのであれば、屋根裏エアコンと床下エアコンが導入できないか検討してみてください。

まとめ

エアコンは身近な存在であるにも関わらず、あまり知られていないことが多いので、かなりのボリュームになってしまいました。

でも、覚えてもらいたいのは次の2️点です。

  1. 新築の場合は、エアコンを最適に設計する
  2. エアコンの購入・買い替え時にはカタログをしっかり読み込んでコスパの良い機種を選択する

高断熱住宅を建てるのは、何よりも快適で健康的な家にしたいから。加えてこれからのエネルギー事情を考えると、なるべくエコでそれを叶えたい。

なるべくお金をかけずに、快適で健康的な家づくり。

それが、ぜひとも皆さんに行なってほしいことです。

エアコンの最適設計と正しい機種選びは、それを実現させるための大切なステップです。

ぜひ、高断熱住宅のための正しいエアコンを選んでください。

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