高断熱住宅のためのエコ給湯器の選び方
新しく家を建てるときにはもちろん、リノベーション時にも給湯器を選ぶことでしょう。
せっかく高断熱住宅にするのなら、給湯器もなるべくエコなものにしたいですよね。
では、高断熱住宅に最適なエコ給湯器の選び方を一緒に考えてみましょう。
給湯器の種類
一般住宅に設置する給湯器は、使う燃料によって以下の3種類に分けられます。
1.石油給湯器
2.ガス給湯器
3.電気給湯器
また給湯方式によっても、給湯栓を開くと同時に加熱しながらお湯を流す「瞬間式」と、あらかじめタンクに温めたお湯を貯めておく「貯湯式」に分けられます。
しかしこの2つのタイプは例えばガス給湯器は瞬間式が多い、電気給湯器には貯湯式が向いているというふうに、給湯器の種類によってタイプもほぼ決まってしまうということを覚えておいてください。
1.石油給湯器
石油(灯油)を燃焼させた熱を使って水を温めるのが、石油給湯器です。
水を温める速度が非常に早いため、瞬間式のタイプがほとんど。設置コストが安い、故障しにくいというメリットがある一方で、灯油の価格変動の差を受けやすく、ランニングコストも高くなりがちです。
- 寒冷地でのパフォーマンスの高さ
- シンプルで取り扱いも楽
- 初期費用が安い
- 灯油価格によるコスト変動が大きい
- 灯油を補充する手間がかかる
- 運転音が大きい
2.ガス給湯器
都市ガスやプロパンガスを使ってお湯を沸かすのが、ガス給湯器です。
設置スペースをあまり取らず、初期コストも低めなので、集合住宅をはじめとしてガス給湯器を利用しているご家庭は非常に多いですね。
都市ガスかプロパンガスかといった違いだけではなく、地域や業者によっても燃料費に違いが出てくるため、ランニングコストを抑えるためにはガス業者選びが重要になります。
- 大きな設置スペースを必要としない
- 石油給湯器よりも省エネ性能が高い
- 初期コストが抑えられる
- 地域や業者による燃料費の差が大きい
- 寒冷地では凍結対策が必要
- 本体の寿命が比較的短い
3.電気給湯器
電気ポットと同じように、電熱ヒーターを使ってお湯を作るのが電気給湯器(電気温水器)です。
家庭用の電気給湯器は沸かしたお湯をタンクに貯めておく貯湯式で、必要な時にいつでもお湯を使えるというメリットがある一方、お湯を使い切ってしまう湯切れになってしまいます。そのため、生活スタイルに合わせた適切なタンク容量を見極める必要があります。
また電気料金が高騰している昨今では、ランニングコストが高くつくというデメリットも見過ごせません。
- 火を使わないので安全性が高い
- 動作音が小さい
- 耐用年数が長い
- ランニングコストが高い
- 湯切れの心配がある
- 水圧が弱い
給湯器の選び方
給湯器にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、最も大切なのは省エネ性能です。
なぜなら家全体で使う一次エネルギー量に占める、給湯器の割合が大きいから。
一般的な家庭で1年間に消費する一次エネルギー消費量は、およそ75GJ(ギガジュール)と言われています。
その中で給湯器が使うエネルギー量は、省エネ性能が高いとされるガス給湯器でもおよそ22GJ
つまり、家全体で使うエネルギー量の3分の1近くを給湯器が占めているわけです。
そのため、従来の給湯器よりも省エネな、エコ給湯器が最近の主流となっています。
その代表格が、「エコジョーズ」と「エコキュート」です。
エコジョーズは正式名称を「潜熱回収型ガス給湯器」と言い、エネルギー効率を高めたガス給湯器のことです。
エコジョーズは水を温める際に生じる排熱を再利用することによって、省エネ効果を高めています。
従来型のガス給湯器と比較すると、エコジョーズはおよそ2割ほどガス使用量を削減できるとされています。
さらに2024年現在、追い焚き機能があるエコジョーズに関しては、国から7万円の補助金が支給されています。
(https://chintai-shoene2024.meti.go.jp/materials/ecojozu.html)
メリット・デメリットは従来型のガス給湯器と大きく変わらないため、安いガス会社が利用できるところでガス給湯器の設置を検討されている方には、エコジョーズの導入をおすすめします。
正式名称を「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」と言うエコキュートは、電気を使うという点では従来型の電気給湯器と同じですが、その方法が大きく異なります。
エコキュートでは冷媒を介して外気から熱エネルギーを取り込む「ヒートポンプ」方式でお湯を沸かします。
従来型の電気給湯器が電熱ヒーターを使って水を温めるのに対し、エコキュートで電気を利用するのはヒートポンプのシステムを回すため。そのため、電気の使用量を大幅に削減できます。
従来型の電気温水器と比較すると、エコキュートはおよそ1/4も電気使用量を削減できるとされていますから、非常にエコな給湯器なのです。
エコキュートも従来型の電気温水器と同じく、温めたお湯をタンクに貯めて利用します。
そのため、電気料金の安い深夜にお湯を沸かしてタンクに貯めておけば、さらにエコ。実際にエコキュートでは深夜にお湯を作り出して貯湯することがデフォルトになっています。
またエコキュートの設置に対しても、国から補助金が8万円支給されます。
(https://kyutou-shoene2024.meti.go.jp/materials/ecocute.html)
エコジョーズとエコキュート どっち?
補助金をもらえることや、省エネ性能を考えると、従来型の給湯器を新しく設置するメリットはほとんどありません。
では、エコジョーズとエコキュートのどちらを選べばよいのでしょうか?
コストで考える
まずは、エコジョーズとエコキュートをコスト面で比較してみましょう。
エコジョーズ | エコキュート | |
設置費用 | 25~40万円 | 30~70万円 |
ランニングコスト (年間) | 6~10万円 | 4~6万円 |
このように、設置費用ではエコジョーズ、その後のランニングコストではエコキュートに軍配が上がります。
予算的に給湯器にお金があまりかけられない…という人は、エコジョーズが魅力に思えるかもしれません。ただやはり長い目で見ると、エコキュートの方がコスト面では有利と言えそうです。
特徴で考える
エコジョーズは「瞬間湯沸かし式」の給湯器なので、使いたい時に使いたい分だけお湯を利用できます。
一方でエコキュートは「貯湯式」。万が一お湯を使い切ってしまった場合は、お湯切れになってしまいます。ただお湯を貯められるということは、災害時などで水道が止まってしまった場合でもタンクに貯めておいた分のお湯を使えるということでもあります。
また給湯器本体の大きさにも、大きな違いがあります。
エコキュートはどうしても、タンクなどの設置スペースが必要になります。
そのためマンションのリフォームなどでスペースに限りがある場合は、物理的にエコキュートが設置できないということも有り得そうです。
生活スタイルで考える
ガス式か電気式かという給湯器の違いは、生活スタイルにも大きく影響します。
オール電化住宅を希望する人は、自動的にエコキュートとなるでしょう。
ただ、どうしてもガスコンロを使いたいという人は、エコジョーズという選択も十分に考えられます。
太陽光発電を設置するならおひさまエコキュート
高断熱住宅に太陽光発電の設置を考えている人は、もう一つの選択肢があります。
それが、「おひさまエコキュート」です。
エコキュートは深夜にお湯を沸かして貯水するのですが、最近は電気料金各社が深夜電気料金を値上げしたため、日中の電気料金との価格差が縮まってきました。
また夜にお湯を沸かして次の日に使うと、どうしてもその間に熱も逃げてしまいます。
その点おひさまエコキュートは太陽光パネルで発電した電力を利用して、昼間にお湯を沸かします。
温めたお湯をその日の内に使いますからロスも少なく、よりエコというわけです。
おひさまエコキュートで太陽光発電の弱点をカバー!
「高断熱住宅と太陽光発電」でも説明しましたが、太陽光発電のデメリットの一つが『夜間に発電できない』ということです。
太陽光パネルで発電できるのは、当然ですが日中だけ。でも普通の家庭で電気を主に利用するのは夜というジレンマがあるわけです。
この問題を解決する一つの方法が、蓄電器を利用すること。ただし導入コストなどを考えると、まだまだ敷居が高いのも事実です。
そこでもう一つの解決策となるのが、おひさまエコキュートというわけです。
昼間に太陽光パネルで発電した電力を使ってお湯を沸かしておけば、ほぼコスト0で給湯できることになります。
家全体に占める給湯器のエネルギー量を考えると、かなりの節電効果になることが分かるのではないでしょうか。
これまでは太陽光発電の余剰電力は、電力会社に売る(売電)ことが勧められてきました。
しかし、余剰電力の売電価格は年々低下しているのをご存知でしょうか?
2012年度には42円/kWhだった買取価格が、2024年には16円/kWhまで下落しています。
電気料金はおおよそ33円/kWhですから、太陽光パネルで発電した電力は売るよりも、おひさまエコキュートでお湯にするエネルギーとして使ったほうがお得なのです。
しかも、おひさまエコキュートも補助金の対象になります。
その金額は、13万円。エコキュートよりも5万円多くもらえるわけです。
(https://kyutou-shoene2024.meti.go.jp/materials/ecocute.html)
エコキュートとおひさまエコキュートの導入コストの差は5万~10万円ほどですから、補助金とその後の節電効果を考えると、太陽光発電を設置する家でおひさまエコキュートを導入しない手はないと言えるのではないでしょうか。
おひさまエコキュート設置時の注意点
おひさまエコキュート(通常のエコキュートも含む)のタンクは、屋外に設置するのが一般的ですが、可能な限り屋内に設置するのをオススメします。
理由は、その方がよりエコで省エネだから。
タンクが屋外にある場合、冬であればせっかく沸かしたお湯の熱も、外に奪われてしまいます。熱は必ず高いところから低いところに移動するということは「基本のキ!なぜ冬に家は寒くなる?」で学んだとおり。
屋内に設置すれば、より無駄なくエネルギーを蓄えることができてエコというわけです。
実際に北海道では、エコキュートのタンクは屋内設置が当たり前になっているそうです。
さらに言うとタンク自体も暖かいわけですから、冬場の暖房効率も良くなるという副産物的な効果も得られます。
逆に夏は熱を持つものが家の中にあるのは不利に思えますが、実際はそうでもありません。
なぜなら、夏は太陽光パネルの発電量も上がるから。多少の熱を持つものがあったとしても、太陽光発電で生み出した電力でエアコンを回せるので、大きな問題にはならないというわけです。
またこれも当たり前のことですが、おひさまエコキュートのタンクを屋内に設置する場合には、なるべく目につかないところに置きましょう。
そこまで考えるのが本当の「設計・デザイン」なのですが、なぜか玄関の周りにタンクを設置するような建築士も実際にいたりするのです。
脱衣所の周辺に設置することが可能であれば冬場には暖かくなりますし、夏は室内への影響も少ないのでおすすめです。
おひさまエコキュートをよりエコに利用するには?
おひさまエコキュートを最大限エコに利用するために、電気料金プランを見直しましょう。
実は各電力会社ともに、エコキュート専用プランというものが用意されています。
エコキュート専用プランの特徴は、深夜時間帯の電気料金が安く設定されていること。
しかしおひさまエコキュートがお湯を沸かすのは日中、そして太陽光パネルで発電した電力を使いますから、このプランは適していません。
そこで最近は電気料金各社とも、おひさまエコキュート専用プランの提供を始めています。
それならば、そのおひさまエコキュート専用プランで良いじゃないか。となりそうですが、話はそう簡単ではありません。
どの電気料金プランが最適なのかは、ライフスタイルや電力会社などによって変わってくるからです。
例えばおひさまエコキュート専用プランよりも、最もスタンダードな「従量電灯」プランの方が電気料金が安くなる場合もあります。
その点について、東京電力のプランで比較してみましょう。
東京電力ではおひさまエコキュート専用プランである「くらし上手」プランがありますが、それと「従量電灯B・60A」のプランで一ヶ月の電気料金を比較してみます。
基本料金 | 電気料金 | 250kWh使用時の合計金額 | 燃料費調整額の上限 | ||
くらし 上手S | 2,654円 | 120kWhまで | 120kWh超過 | 10,317円 | なし |
3,670円(定額) | 30.72円/kWh | ||||
従量電灯B | 1,870円 | 120kWhまで | 120kWh~300kWh | 10,178円 | あり |
29.8円/1kWh | 36.4円/1kWh |
1ヶ月の電気使用量を仮に250kWhとした時の合計金額は、「くらし上手S」よりも、「従量電灯B」のプランの方がわずかながら安くなることが分かります。
また「従量電灯B」では、契約アンペア数によって基本料金も変わります。もし40アンペアの契約にすると基本料金は1,247円になるため、差額はさらに広がることになります。
さらに注目したいのが、燃料費調整額の上限の有無です。
燃料費調整額とは、燃料価格の変動によって算出される調整額のこと。
ロシアのウクライナ侵攻などによって、この燃料費調整額が跳ね上がったのは記憶に新しいのではないでしょうか。
「従量電灯」プランでは、この燃料費調整額に上限が設定されていますが、「くらし上手」には上限がありません。
そのため、もし今後再び燃料費調整額が上昇するようなことがあれば、おひさまエコキュート専用プランであっても電気料金が高くついてしまう、ということも十分にあり得るわけです。
これはあくまでも、一つのシミュレーションに過ぎません。
電気料金は電力会社やプラン、生活スタイルなどによって大きく変わってきます。
そのため、十分に検討した上で自分のライフスタイルにぴったり合ったプランを選択することが大切です。
ぜひご自分の地域の各電力会社のプランをしっかり見比べてください。
どうしても難しければ、信用できるプロに相談すると良いでしょう。
給湯器選びについて、どんな考え方をしたら良いのか?
高断熱住宅にピッタリの給湯器を選ぶために、ぜひ次の点を覚えておいてください
【給湯器選びについての基本的な考え方】
・従来型の給湯器ではなく、必ずエコ給湯器にする
・コストや特徴、生活スタイルをもとに、エコジョーズかエコキュートを選択する
・太陽光パネルを設置する場合は、おひさまエコキュートにする
・電力会社の各プランをしっかり検討し、最適なプランを選択する
給湯器も10年単位と長く使い続けるものなので、ぜひ自分の高断熱住宅にピッタリのものを選びましょう
まとめ
高断熱住宅は家計にも地球にも優しいエコな家。
だからこそ、給湯器にもこだわりたいですよね。
設置費用だけではなく、補助金やランニングコスト、自分たちの生活スタイルなどを総合的に検討して、ぜひ最適な給湯器を選択してください。