家じまいして高齢の親でも賃貸を借りれる?

<実家の家じまい TOPへ戻る

<コラム一覧へ戻る

親が高齢になってきた世代は、親の住まい・暮らしが気になってくると思います。
このまま田舎の実家に住み続けるのか、どこか施設に入るつもりなのか、その時の費用はどうするつもりなんだろう・・
私は30代、両親はまだ60代ですが、これからの住まいについて心配しており、親に直接聞いてみたことがあります。

子のこころ、親知らず

私「このまま、あの家(私の実家)で暮らし続けるつもりなの?あの家は、土地が定借(定期借地権)であと30年もないんじゃない?」

>土地が定借の場合の実家じまいについては別コラムにします。

父「その(今のまま住み続ける)つもりだけど」

私「でもこのままだと、92歳ぐらいで家を潰さないといけない感じだよ?今の平均寿命からしたら生きていてもおかしくないよ。90歳で引越しは体力的にも厳しいよ?今のうちに、今貸している持ち家(実家以外に所有している不動産がある、仮称K家)に引っ越したらどう?」

父「K家は知り合いに貸しているから、引越しなんてできない。90歳で引越しじゃなくても、もうちょっと前に引っ越せばいい」

私「どこに引っ越すの?施設とか考えてるの?」

父「賃貸物件があるだろ、そんなに高くないって聞くし、お母さんと2人なら大丈夫だろ。大丈夫、お前には迷惑かけないから」

何歳まで生きられるのか、誰もわからない。だからこそ考えて欲しい。

この私の実家は、土地定借50年の持ち家、土地は借地・建物は所有、ということです。
あと24年(上記会話から数年経過)もしないうちに、土地は更地にして持ち主さんに返さないといけないのです。
それも両親は90歳を超えた頃に。 その頃、すでに両親が他界している、とかだと家の問題は簡単に解決できます。その家に住む人はいなくなるので、土地所有者に期間終了時にお返しする準備をすれば良いだけです。

でも、両親がまだ元気だったらどうでしょう。住む場所を変えざるを得ません。

今、日本では男性の平均寿命は81.09年、女性の平均寿命は87.14年です。(厚生労働省、2023年分の平均寿命平均余命が記載された令和5年簡易生命表を発表)また、令和5年簡易生命表によると、90歳まで生存する者の割合は男性26.0%、女性50.1%ということです。

実際に現在も元気に暮らしている父方の祖母は、96歳。築年数不詳の父の実家で一人暮らしをしています。この家は父の兄(叔父)が相続しており、祖母は住まいが確保されて安心して住み続けることができます。

でも、私の両親は違うのです。24年後に父母が存命で施設や入院することなく、元気に暮らしているとしたら、どこに住むのでしょうか。住まいの確保が20年先に揺らいでいるのです。その危機感が両親には無いように感じます。

もちろん私の住んできるところに呼び寄せることもできますが、今の自宅では部屋数は足りませんし、夫や子供とも話し合い、引越しが必要になるでしょう。

高齢期の引越し、特に荷物の片づけも大きな負担です。

高齢者に部屋を貸してくれる大家さんも事業を行っている

では、父が言うように賃貸を借りて両親だけで生活ができるでしょうか?

まず賃貸を70代の両親の名義で借りることはかなり困難です。

賃貸業界に身を置いていた経験からすると、60代でもちょっと難しくなってくるなぁと感じます。 60代は見た目で言えば、まだまだ高齢者という印象ではない方も多いです。まだお仕事をされている方もいらっしゃいますし、健康に過ごしているかたも多いでしょう。 しかし、20代30代と比べれば、70歳近くになれば病気にかかりやすい、認知症のリスクも上がってくる、金銭的に年金収入がメインとなってくる。 そういった理由から賃貸を借りるという選択肢はかなり難しい状況になってきます。

賃貸の選り好みをしなければ貸してくれるのでは、と考えがちですが、価格帯に関係なく高齢者は貸してもらいにくいのです。

近年、高齢者への貸し渋りが業界でも問題視されていますが、家を貸す人(貸主・大家)も事業として賃貸経営しています。高齢者に貸すぐらいなら空室の方がいいと、空室リスクと高齢者リスクを考えれば空室のほうがマシ、と考えている人もいます。

その理由は大きく分けて3つあると思います。

  • 事故物件、いわゆる孤独死を怖れている
  • 認知症になった時の対応に困る
  • 建物を建て替える時に退去してもらえず困る

安心して暮らすために何が必要なのか

私の両親の場合、2人で暮らすことを考えれば孤独死の可能性は極めて低い、認知症になったとしても対応できる人がいないというわけではない、という状況ですが、3の建て替えの時にすんなり退去できるかどうかはわかりません。お金があるか無いかではなく、引っ越す先があるかどうかで動けるかどうか決まるからです。

こうした事情を賃貸を借りるときに、賃貸会社の店舗にいる営業マンは最初から聞いてくれるでしょうか?納得してくれるように両親は話せるでしょうか?

これらの逆を言えば、貸主や賃貸会社の不安や困るであろうことをつぶしておけば、貸してくれる可能性は出てきます。そのためには親の力だけでなく、子どもの協力が必須です。それでも希望のエリアに希望の価格帯で貸してくれるかはもちろんわかりません。

また、高齢親の契約ではなく、子どもの契約で部屋を借りて親が住むということも貸してもらいやすくなります。契約者である子どもに収入があり、近くに住んでいる、何かあれば責任は契約者である子どもに発生しますから、貸主・管理会社・不動産会社も安心しやすいですね。

まとめ

子どもが親の住まい探しのために時間をたくさん使えないということであれば、両親の希望をよく聞き、貸主や管理会社に誠実に掛け合ってくれる不動産エージェントや営業担当者を見つけておくことも大事でしょう。

家じまいして高齢の親でも賃貸を借りれる?

高齢者が賃貸を借りるのは一筋縄ではいかない。
貸主の不安を払拭できる材料と協力者を集めることが大事。

まだまだ賃貸不動産業界では、高齢者に賃貸物件を貸してもらうことは難しい状況です。
しかし、高齢化がどんどん進み、厚労省によれば2025年には75歳の総人口に占める割合は18%を超えるようです、そうなると今後ますます高齢者の賃貸物件の入居希望は増加するでしょうし、人口全体が減少しているため、貸主も高齢者へ貸すことも考えなければ経営が成り立たない可能性もあります。見守り機器やサービス提供なども増加傾向にありますから、今後高齢者への貸し渋りも緩和されていくことを願います。



この記事を書いた不動産エージェント

福祉宅建士 久保 有美
宅建士と社会福祉士の両方の知識を活かして活動をしています。
2023年に祖父が亡くなり、親族への相続登記をサポートしました。
その際に見た不動産の情報は親族も知らない情報がたくさんあり、70代の父や叔父だけでは正しい情報をまとめることが困難だった為サポートに入りました。
相続も実家じまいも正しい不動産の情報・状況をまとめることが、次なる相続の対策になると感じています。

  • URLをコピーしました!
LINEで簡単相談 Contactご相談・お問い合わせ